誕生日の花飾りアーチ

 Lさんは今朝も早くからひとりでワゴン車を運転して仕事に出掛けた。Lさんの母親の誕生日が明日(18日)やってくる。この日は子どもたちの誰かの家に、親族皆集まってお祝いをするのが決まりだという。今年はLさんの家で、つまり私がお世話になっているこの家に集まると言う。

 それで母親を迎える花飾りの門(アーチ)を、今日いち 日で作って欲しいとミッキー叔父さんとZ氏の二人は頼まれたようだ。昨日の35℃を超える暑さに参っていた私は、今日一日外出せずに休憩することにしたので、二人の作業を見たり、少し手伝ったりした。庭は広くは無かったが芝生が綺麗で、生垣には色々な木が植えられていた。

 適当な木材を揃え、上部で左右両側の柱の部分を繋ぐため、金具を買出しに、すぐ近くの工具資材販売店へ出かけるというので、私もついて行った。歩いて10分も掛からない場所だ。


 金具の種類も多くはなかったが、釘やボルトとナットの種類も少なかった。アーチ全体に巻きつける幅広のリボンテープは有るかと店員に聞いたが、その様なものは見たこともないとの返事だった。勿論ガムテープなどは全く見当たらなかった。

 天井になる部分は少し丸みを持たせたいと、それに使えそうな板を探して買った。余分なところはグラインダーで削り落とした。左右両側の柱になる部分は、まっすぐな平型角材を探して来た。さてその角材を同じ長さに切る作業が始まった。

 何とピストン運動をするモーター付の機械に、幅15mm、暑さ1mm、長さ10cm程の、日本で言うならば「金切りノコの歯」の様な物を差し込んでスイッチを入れた。がっちりした体格のZ氏が、両手で角材をしっかりと押さえつけ、ミッキー叔父さんが電動ノコのスイッチを入れた。

 その時の角材を切る音は鈍くて驚くほど大きかった。Z氏の太い両腕も、幾分ブルブルと震えていた。全く日本のノコギリとは違った道具に、私はスッカリ驚かされた。直ぐに1本目の歯は鋭い金属音を立てて折れた。

 何とか長さが揃い上部になる木と接続することになった。先ほど買ってきた金具で接続したが安定しない。私は、裏側から三角版で補強した方が良いと助言した。早速ベニア板を持ってきて切りとり、取り付けると、接続部はグラグラしないようになった。

 立てるためには、ブロックの穴に角材を差込む計画だったが、私は脚になる部分の横木を提案し、それをブロックか大きな石で固定した方が、しっかりすると助言し、これもまた採用された。その後で、白いペンキを全体に塗って、作業が終了したのは、もう薄暗くなった21時近くだった。

 Lさんが帰宅し、花飾りの骨組みまで完成したことを話しながら、暫くして四人で夕食となった。中国のP氏は、今朝ハンガリーエスペラント大会会場へ出かけたので、もうこの家にいない。

 明日(18日)は私もお別れなので、3人にお礼の挨拶をし、Lさんには、日本から持参した小羊羹をあげて、明日の母親の誕生会で食べて貰うようにお願いした。小さな扇子と日本語の書かれた小タペストリーを説明し、ウイーンで買った音楽CDもお礼に渡した。
 Z氏には帰国したら日本の地図を必ず送ることを約束した。こうしてこの家での滞在は終わった。