D氏家族とお別れ

 今日(12日)からD氏は勤務を再開する。奥さんも働きに出る。私がこの家をでる時間よりも先に、二人とも家を出ることになった。
 奥さんは女の子を保育園へ預けて職場へ行く。D氏は下げ籠に赤ん坊を入れたまま出かけた。途中で託児所に預けるのだと言う。

 D氏に頼んでタクシーを私の出発予定時間に合わせて、アパートまで来てくれるようにした。
 私の名前と日本人だということを待ち合わせのキーにしてもらった。アパートの鍵を預かり、出るときに封筒に入れて指定された場所に返した。
 今回の旅行でもバレンシアエスペラント事務所にお別れするとき、同じよう方法で鍵を封筒に入れて返した。もう心配など感じない。

 エスペラントの世界では、エスペラント語を使用する人たちは皆ひとつの家族員であるという考え方がある。D氏と私はインターネットで宿泊の約束を交わし、たった2晩お世話になっただけなのに、大切な鍵を私に渡して、先に家をでるなど信じ難いことだが、事実である。

 予定の時間になり鍵をかけて、旅行カバンを下げて階段を降り、ビルの前に立ってタクシーが来るのを待った。やってきたタクシーの運転手に挨拶をして「駅まで頼むと」言えば「近いから歩いてゆけるぞ」というそぶりを見せた。「いや旅行カバンが重たいのだ」といって彼に渡すと、「おー」とひと声あげて、トランクに入れた。