ブリュッセル駅での出会い

 列車はたいして遅れはしなかったが、ホームを出て広い構内で、情報案内所を探して歩いたが見つからない。駅の出口近くに駅構内の案内図があったので、ながめてみたが場所が分からない。
 例の調子で、近くに来た女性の通行人を呼びとめて案内図を指で示し、「ヘルプ、ミィ」「インフォメーション」と言って助けてもらった。
 駅構内図の一部を指差して「ここだ」と言ったようだったが、彼女は手招きして歩き出した。多分一緒に行こうと言ってくれたようだ。
 角をひとつ曲がると真っ直ぐ右側を指差して何か言った。この方角へ行けば良いのだと理解して、「コーラン、ダンコン(ありがとう)」と礼を言って歩き始めた。

 50mほど進んでから、この方角で良いのか再度確認しようと、携帯電話を耳に何か話ながら立ち止まっていた男性がいた。ベージュ色の夏の背広の上着を片手でつかんで肩にかけた、私よりも背が高いスラリとした紳士だった。

 私が「パルドーノン(すみません)」と話しかけると、その男性は突然振り返えり、エスペラント語で私の名前を叫んだ。いま家に電話して、私から電話がなかったか確認していたところだと言う。実にタイミング良く、受け入れ者H氏に会えたものだ。

 次の旅行地パリ(フランス)へ行くのに、座席指定券を購入するため、彼と一緒に切符売場へ行った。トーマス・クックの時刻表で事前に調べていた通りの時刻に発車する列車があった。
 この列車はロンドン(イギリス)からパリ(フランス)へ向かう特急列車で、指定席のために41ユーロを支払わなければならなかった。

 駅の直ぐ近くに自家用車を停めているというので、二人で歩き出した。今朝の天気と違ってこのブリュッセル市では、太陽の輝きも強く、汗が額に溢れ出た。