Lさんの小観光案内

 Lさんは朝から仕事の関係で会社へ打ち合わせに行くため、例のミッキー叔父さんの運転で、三人で街へ出かけた。10時には彼女の仕事が終わるので、観光案内してくれることになった。

 その前に小さなメモ用紙を渡された。それには、私が一人でブタペスト駅から帰宅するためのバス停留所と路線番号と降りる駅名が書かれていた。万一首尾よく帰れなかった場合のために、彼女の携帯電話番号と、自宅に居る夫Z氏の携帯番号が書かれていた。

 街に入ると直ぐにLさんを降ろし、ミッキー叔父さんと私はブタペスト駅へ向かった。駅に着くと道路脇の無料の駐車位置に車を止め、叔父さんは私を連れて駅裏のバス停へ案内した。バス停に貼られた時刻表の路線番号を指して教えてくれ、降りる駅名も教えてくれた。
 朝家を出る時に、夕方18時頃には帰宅するようにと、Lさんが言っていたことも、ミッキー叔父さんは私に念を押した。

 車へ戻り二人でLさんと落ち合う場所へ向かった。少し大きな広場のある公園で彼女は私を待っていた。1時間半程案内できるから、と石畳を歩き出した。今日も天気は良くて空は晴れていた。すぐに午後は暑くなるなと分かった。

 一年間に1回しか上下に回転しない大きな砂時計には驚かされた。資料館や文化館などの前を散歩し、英雄達の銅像がずらりと並んだ公園に出た。夫々の英雄についての彼女の詳しい説明にも驚いた。
 観光団の一行がガイドの案内で、この英雄公園に来ていた。日本に来た外国人に、私は大雑把な説明をしていたことを恥じた。銅像は 高い台座の上に立てられいて、台座にはその栄光を称えるレリーフがはめ込まれていた。
 その後、ブタペスト駅へ行くのは、地下鉄でも、バスでも行けるからと、Lさんは私に告げて午後の仕事へ戻っていった。さあ、私のひとり観光の始まりだ。