ひとりでぶらり観光

 Lさんと別れて私は一人で散歩することになった。地下鉄へ潜る角の大きな交差点には自転車やバイク専用の信号機があった。日本では見かけないが、ヨーロッパの他の都市にも、このような信号機があるかも知れないと思った。

 通り過ぎて少し行くと公園があり、道路から立像が見えたので入った。噴水付きの立像や、立像だけのものもあった。腕時計を見るともう12時を過ぎていた。公園の木陰にベンチが並んでいた。公園から少し外れた道に、何やら売っている店の看板が見えたので行って見ると、パンやジュースなどがある。早速買って公園に戻り、ベンチに腰掛けて食べた。

 公園の出口には、沢山のカギを取り付けた鉄棒の柵があった。何の理由か知らないが、多分日本と同じ、恋人達の願いの印だろうか。中国の武陵源の山奥では、この10倍もあるカギの鉄柵を見た。

 食事を済ませ、大きな建物の前の芝生を横切り、小高い丘にある古い城跡へ行くことにした。大きなドナウ川を渡るくさり橋の両側には、石造りのライオン像が番人のように、橋の両側の欄干にあたる位置に座っていた。人がやっと離合できる程の幅の通路は、橋の両側にあり、中央は自動車が往き来していた。川には観光客を乗せた遊覧船が何艘も浮かんでいた。

 橋を渡り終えると直ぐ近くに、丘の上へ行くケーブルカーがあり、王宮の丘へ登って行けた。この城跡には、美術館・図書館・博物館などがあったが、私には時間の余裕が無いので入るのを断念した。急な階段を上って、脚に負担が掛かると大変だと考え、わずか数分の走行だと分かっていたが往復切符を買った。城跡の空地は広く、建物も立派に修復されていた。勿論古いままの場所もまだ残っていた。

 沢山の観光客が次から次に訪れ賑やかな声が響いていた。100%のオレンジジュースは、客の注文を受けてから、その場で大きなオレンジ搾り器に、オレンジの玉を数個落とし込んで販売していた。喉が渇いたので私も頼んで飲んだ味は、少しすっぱかったが、とても美味しかった。
 ぐるりとひと廻りして、ケーブルカーで地上へ戻った。