ウイーン(オーストリア)で散歩

 列車が動き出して2〜3時間たった頃に、三人の若者が同じ部屋に入ってきた。ひそひそ話し声を聴いていると韓国の青年らしい。二人は最上段を使い、一人は中段を利用した。彼らの旅行カバンが部屋に入らない。私のカバンを窓側いっぱいまで引き寄せて、やっと部屋の扉が閉まった。そして1時間程たつと、下段の親子が暗いホームへ降りていった。

 朝になると車掌が小さなパン2個配って廻った。水は350mlのプラスチックボトルが2本寝台に置かれていたので、それを飲もうとしたらガス入り水なので、ウイーン駅で買ってきたガスなし水を飲んだ。

 洗面所が混雑するので早めに顔を洗って戻り、通路で窓の外を眺めていると、青年が二人出てきた。あとの一人はまだベッドの上だ。彼らも顔を洗った後、私と同じように窓の外を眺めていた。私が韓国から来たのかと訊くと、やはりそうだった。

 彼らは大学生で2ヵ月間ヨーロッパを旅行するのだと言った。彼らは英語を話せるが、私は話せない。ただ英単語を並べて会話した。ソウル(韓国)から成田(日本)へ飛び、ロンドン(イギリス)へ入ったそうだ。その後パリ(フランス)を抜けて、ブタペスト(ハンガリー)を訪問し、ドイツでしばらく過ごす予定だった。
 私は福岡からソウル経由でパリへ入り、2ヵ月間一人旅の途中だが、国際語エスペラントを話す仲間を訪ねて旅行しているのだと話した。エスペラント語を知っているかと尋ねたが三人とも知らなかった。韓国ではエス語を教えている大学がソウルの近くにあると言ったら驚いていた。英語を話すのかと訊かれたので、話せないが少しの単語は知っていると答えた。

 ウイーン(オーストリア)駅に到着したが、ブタペスト(ハンガリー)駅へ行く汽車は別の場所から出る。駅構内の情報案内所で、乗り換えホームへ行く方法を聞いた。
 駅前の店でコーヒーを飲んでいた男性に、日程表を見せて確認すると、直ぐそこから電車に乗って行けば良いと教えてくれた。おかげで問題なく目指す駅に着いた。ここからブタペストへ行くのに、イースト・パスを使用しなければならない。直ぐにブタペスト行きの座席指定券を並んで購入した。
 旅行カバンを手荷物預かり所に入れて街へ散歩に出かけた。

 ウイーン駅前には大きな広場があり、その先に街が広がっていた。古い建物も多く、観光客も大勢歩いていた。街の大通りは道幅が広く、自動車もかなり走っていた。沢山の店が並んでいて賑やかな街だった。
 ベンチが幾つか置かれている広場には、水飲み場があり、乳母車を押した女性がやってきて、持っていた水筒に水を汲んで立ち去った。
 私もペットボトルへ水を入れて飲み、汲み足してボトルをショルダーバックへ入れた。昼食は切り売りのビザを買って、食べながら街を散歩した。