観光案内者Eさんとの出会い

 旅の最大の幸せは、何と言っても良い天気に恵まれることだ。今日も快晴、おまけに心地よい風も吹いていた。

 T氏に設定して貰った、Eさんとの待ち合わせ場所のメモを頼りに、地下鉄を乗り継ぎ、パリの朝の街へひとりで出かけた。
 約束は10時、地下鉄を降りて地上に出た直ぐ近くにある映画館の前である。

 方向音痴の私が、すんなり約束場所へ行ける事などない。初めて来たパリでは、どうなることかと思ったが、ブタペスト(ハンガリー)での経験もあり腹を決めた。

 勿論呼び止めた通行人にメモを見せて、映画館の場所はどこかと尋ねながら動いた。やっと地上に出たが、交差点の近くにある映画館は辺りに見えない。通行人に訪ねると、映画館を知らない人もいた。それもそのはずだ。いろいろな国の人が、パリに住んでいるだけでなく、沢山の旅行者も街に溢れているのだ。

 やっとのことで目印の映画館の前に来たのは、10時半に近かった。私を探している人がいるはずだと、あたりを見回しても、それらしい人はいない。キョロキョロしている東洋人の私を見つければ、近寄ってくるはずだと思いながら、辛抱して待つ以外にない。

 近くのスタンドショップの前に女性が一人いるが、店に用事があるのか、私には判断がつかない。
 しばらくすると私の方をチラリチラリと見たりしているので、私から近づいて見た。試しに「サルートン(こんにちは)」と話しかけると、彼女は「あなたは、エスペランチストか」と問い返した。
 遅れた理由を述べて許しを請い、今日の観光案内のお礼を述べた。これから一日街を巡るので、とりあえずコーヒーを飲もうと、直ぐ近くの喫茶店のテラスに座り、20分ほど雑談をした。