T氏のアパート

 T氏の家へは地下鉄を2回乗り換えて着いた駅から、ゆっくり歩いて10分程度の場所にあった。静かな郊外の住宅街といったところだ。
 広い駐車場があり、バイクや自転車を入れるカギ付きの小屋も敷地内にあった。

 アパートビルの5階だが、なんとエレベータは5階と6階の間で停まった。つまり部屋のフロア位置は、丁度中間に造られていたのだ。初めて出会ったこの建築方法には驚ろかされた。

 8月末に結婚式を挙げて、新婚旅行のため日本へ行く予定だという。二人とも20代前半で、もう数年間一緒に住んでいるのだ。
 相手の女性は、今日は仕事に出かけていて、夕方帰宅するという。彼女を待って、エスペラント仲間と落ち合うために、街へ出ることになった。何でも私の歓迎会をしてくれるというのだ。どんな仲間に出会うのか楽しみにしていた。

 12畳ほどもある広間のソファが私のベッドになる。旅行カバンはその部屋に置いたまま、散歩用のショルダーバッグを取り出して外出の準備をした。
 部屋には大型テレビが置かれていて、パソコンのモニターはそのテレビ、キーボードは無線LANで接続されていた。

 この家には猫が住んでいた。私の家族も随分前にネコをかっていたし、私が学校から帰り、家の近くまで来て、ネコの鳴き声で呼ぶと、走って私を迎えに来た。そして私の肩にのぼって家の中まで入るようなことは度々あった。

 T氏は面白いものを見せてくれた。それはネコをかっているという証明証だった。ネコの写真が貼られたものと、別に所有者の名前や住所などが記述された資料だったのには驚いた。