ホテル三人部屋の住人

 夜になってホテルの部屋に戻ると、今日から一緒に暮らす二人のベッドには、大きなリュックが置かれていたが、人影は見えなかった。私の同室者呼びかけに直ぐに反応したのは、若者A氏(パリ、フランス)だった。彼は世界エスペラント大会参加の常連で、横浜で開催された第92回世界大会にも参加していた。

 最初二人部屋利用を計画していたが、不慣れな私がモタモタしていたら、2個あった空き部屋がみなうまってしまっていた。
 困った私は、三人部屋利用をA氏に提案し、同室者募集のメッセージを大会ホームページで公開し、三人目か現れるのを待つことにした。すると三人目のP氏(オランダ)が現れた。これで申し込むほかないと決断し、互いに大会参加番号と氏名を交換して、ホテル利用予約に成功したのは、4月初めだった。

 A君は独身で、私より少し背が低いが小太りの好青年、話すエス語は流暢で、普段会話をしていないし、エス語を聞きなれていない私にとっては難解だった。少しゆっくり話してくれて頼んで数回聞きなおすと理解できた。

 彼の携帯電話は、2010年日本でも話題になったIPAD機能を有したもので、器用に指先を動かして画面サイズを大きくしたり、画面をタッチペンでつついたり、見事な指さばきに感心した。

 P氏は、私より10cmほど背が高く、顎鬚を生やした顔は、ひと目で、人のよさそうな性格が分るほどだった。