野生狼公園(ALPHA)へピクニック

 少し分厚い雲が幾つか空に浮かんでいたが、雨が降りそうな気配は無かった。顔を洗って広間に来ると、V夫妻は今朝もプールで泳いだと話してくれた。

 今日は遠出して、ピクニックへ行く予定なので、急いで食事をすませ、後片付けをした。Vさんは昼の弁当を作っていた。勿論パンと飲み物と果物という軽食だ。出かける準備がすむと、分厚い木製の両開き戸を閉めるように言われた。なぜだと理由を聞くば、暑い日差しが部屋に差し込むのを防ぐためだと教えてくれた。

 途中で仲間と待ち合わせているというので、V氏の運転で早速出かけた。30分ほど走って大きなショッピング・センターの駐車場に着いた。間もなく2台の車が来て、6名の友人と合流した。残念ながら彼らはエスペランチストではなかったが、気さくに挨拶を交わし、賑やかな出発となった。

 渓流沿いに走り、川向こうの随分高い断崖の上にある赤い屋根の集落を見ながら、対抗二車線の余り広くないアスファルトの道を、結構なスピードで走った。1時間半ほど走ると目的の公園に着いた。山から流れ来る急流の水は、岩に当たってところどころしぶきを上げていた。川岸に近づくと、ひんやりとした空気が身体を包み込んだ。

 日の当たる場所に移動して昼食となった。ワインもビールも、もっと強いアルコールも準備されていた。パンや果物のほかに、スパゲティやサラダやアイスクリーム等を皆が手分けして持参していた。賑やかな昼食は1時間程で終わり、さっそく野生狼公園へ入ることになった。
 入園者と出園者の人数を確認するため、磁気カードの入場券が使用されていた。5年ほど前に私が中国の武陵源へ観光旅行した時も、磁気カードが使用されていた。


 公園といっても野球場10個分以上もあると思われる山手の場所すべてである。いやもっと広いかもしれない。観光客が放し飼いにされた狼をよく見ることが出来るようにと、小高い場所から突き出た物見小屋が幾つも作られていた。勿論厚さ3cm位の板塀や、太い金網で、危険にさらされないように作られていた。

 小さな子どもたちのためには、背丈に合った場所に覗き窓が作られていた。もっと小さな子どもたちのためには、大きな木を輪切りにした踏み台が置かれていた。山肌の斜面を何度も往き来したので、多少右足に違和感があり、ゆっくりと足を運んで小道を進んだ。

 木陰に横になって寝ている狼が数頭いたが、投げ入れられた肉塊に噛り付いているのもいた。ゆっくり歩きながら山奥へ戻って行くのもいた。

 公園に入った直ぐ近くには記念品売り場があり、お菓子やジュースやアイスクリームなども売っていた。店の近くには、狼の生態などについて紹介したビデオを上映する小屋も5〜6個建っていた。上映内容は野生狼の歴史から管理人の生活などもあり、上映時間は15〜20分程度なので、皆でビデオを楽しんだ。

 16時を過ぎたので帰ることにした。今夜は屋外映画館にも行かなければ成らない。楽しい一日を過ごした仲間に別れの挨拶をして、夫々に車で帰宅の道についた。
 17時頃街へ近づくと雲行きが怪しくなり、急に大粒の雨が降り出し、車のボンネットで弾け続けた。V氏の運転なので安心ではあるが、道路の混雑をさけて、坂の多い道へ入り込むと、離合の車が結構多かった。おもいはみんな同じかと、Vさんが言って笑った。途中で大学生の娘さんを乗せて急いで帰宅した。