サッカー観戦
[下記の順番に読んでください。]
1.マドリードへ
2.湿布薬を買いに薬局へ
3.予定の受け入れ者R氏へ電話
4.サッカー観戦
ホテルの玄関で待っている私のところへ、17時30分丁度にR氏と友人がモダンなスポーツカーでやって来た。ビルの谷間にある狭い通路に、車のエンジン音が響き渡った。二人ともエスペラント語を話す。
これからサッカーの試合観戦に行くので一緒に来ないかと言う。その後で食事をしようと言うし、数時間で戻れると言うので車に乗り込んだ。
仕事終わりの帰宅時間ラッシュだろう、道路には自動車が溢れていた。若いR氏の運転は少々荒っぽいが上手だ。30分ほど走って古い建物が並ぶ住宅街へ入った。路上に駐車し5分ほど歩いて、がっしりした分厚い鉄の門の前に来た。
ベルを押して合図すると、間もなく門を開けることが出来た。この方法は海外旅行者たちから以前聞いていた。門の内側には、やはり古い建物があり、その門を入り今度は建物の扉のベルを鳴らすと、やがて門が開き3階に上がった。部屋に着くと中から足音がして数名の女性が現れドアを開けてくれた。
R氏と友人の男性は、部屋で待っていた仲間とスペイン語で気安く挨拶したようだ。もう4〜5名集まり、大きなテレビのある広い部屋で賑やかに喋っていた。サッカー観戦とは、TV放送のことだったのだ。
日本から来たエスペランチストだとR氏が私を紹介してくれたので、私は「サるートン(こんにちは)」と何回も言いながら握手をした。10分程して別のグループが5〜6名加わった。全員で10数名となったが、エスペランチストは数名だけだった。
今日はブラジルとアメリカのサッカー試合だ。R氏はブラジル出身で、この家の持ち主の女性もブラジル人。集まった多くがブラジル人だった。自動車で一緒に来たR氏の友人はアメリカ出身。応援はふたつに分かれた。
どちらのチームが勝つと思うかと私にもたずねた。かの名プレーヤーのベッカムがアメリカに呼ばれて1年間ほどプレーし、アメリカのレベルが最近上がったという噂は、それほどサッカーに詳しくない私でも知っていた。しかし、強豪ブラジルの相手にならないと想った。
「勝つのはブラジルだ」と言ったら、「スコアは幾つか」と聴くので、「2−0だ」と答えた。ところが試合が始まると前半0−2で負けている。後半になって注目のカカがゴールし、とうとう逆転して3−2でブラジルが勝ってしました。
観戦をしながら、シュートの度にブラジル人の歓声は部屋の中で爆発した。日本に居てテレビで観ているサポーターの騒ぎは、このようなものかと呆れるほどだった。途中でサンドイッチや缶ビールが出て、一緒に少しばかり食べたり飲んだりした。
試合が終わってR氏と友人は車でホテルまで私を送ってくれた。ホテルの玄関に着いてから、私は小型リュックの中から日本の音楽CDを取り出して、「バンブー・フルート(尺八)の音楽だ」と説明し、出会いの記念だといってR氏に渡した。彼の家に泊ることが出来なかったことを詫び、いつかまた会おうと、さよならした。
ホテルの部屋に戻ってシャワーをゆっくりと浴び、旅行カバンの中を整理して、ベッドに寝転び、脚のマッサージを念入りにして、日本から持ってきた筋肉痛用のクリームを薄くのばした。明日(29日)はバレンシア(スペイン)だ。窓から夜空を眺めながら、いつの間にか寝入ってしまった。