会話と辞書

 35歳で私がエスペラント語の学習を始めたのは、関西エスペラント連盟(KLEG)の通信講座で、6ヵ月で確か3600円だった。
 今はインターネット上に幾つかの無料講座があるので、興味がある人なら誰でも今日から学習できる。
 ひとり旅や現地の生活を実体験したい人には、最も有効で価値ある言葉がエスペラント語だと私は確信している。

 殆ど独習の私の会話力など大したことはないが、ちょっとした会話を交わすくらいなら、何人か外国人が来日した折に、福岡市などの観光案内や買い物の世話などした経験から殆ど問題ないと思っている。

 10年程前に8中学校でエスペラント語紹介授業を行なった時に、生徒達から次のような質問を受けた。「アメリカでエスペラント語は通じますか」というものだ。私は次のようにたずねた。
アメリカで日本語は通じると思いますか」
 生徒たちの返事はこうだった。
「日本語を知っている人がいたら通じると思います」。
 そして私は次のように答えた。
エスペラント語もひとつの言葉なので、話す人がいたら世界中の国々で通用します」。

 私達が日頃使っている日本語でさえ、会話の途中で分からない言葉に出会っても、辞書を引いたりはしない。エスペラント語の会話でも同じことだと思う。
 私が2ヵ月間の外国旅行に持っていったのは、ポケット版の和エス辞典(梶弘和編)1冊だけだった。日本語とエス語以外どの国の言葉も分からないのだから。事故や病気の緊急時や、どうしても伝えなければならないことが発生したときに、この辞書を使う以外、用がないと考えた。