寝る準備と中国人雑貨店

 寝るための準備をしなければならない。3人掛けのソファーベッドが使えそうだ。あまり掃除はしていないようで、何処も埃が指についてくる。腹を決めて、旅行カバンに入れてきたタオルを1本雑巾にした。そこら辺りを全部吹き上げた。

 丁度そのとき、誰か部屋のドアをカギで開ける音がした。入ってきたのは私より少し年配の男性だった。「サるートン」と私は直ぐに挨拶して、簡単に自己紹介をし、A氏がここに泊ることを許可してくれたと話した。なんと彼はバレンシアエスペラント会会長だった。

 仕事で他の街に行ったのだが、今日戻って来たので、ちょと事務所に立ち寄ったのだと云う。2ヵ月間にわたる私の旅行計画などを話しながら20分間ほど雑談した。彼は私のエス会話について「よくしゃべるなあ。数日後にバレンシア地方のエスペラント大会があるので、数日滞在を延ばさないか」と話した。これには多少嬉しかった。「次の訪問地への日程が決まっているので無理だ」と返事して断った。1時間ほど経って「ゆっくり楽しむように」と、彼は帰っていった。

 ソファーに直接寝るのには冷たすぎる。事務所の近くの交差点脇に、中国人が経営する雑貨店があった。早速出かけて行って色々かった。ソファーに被せるための少し厚手のフトンカバー、寝るとき身体を覆う薄手のタオルケット、洗濯物をぶら下げるためのハンガー10本組、洗った靴下などをぶら下げるための洗濯バサミ20個、それに洗剤などなど。驚いたことにこの店は、30m四方程度の広さなのに、日本のナフコやグツディのように、何でも売っていた。

 洗濯物を干すための10mビニールロープは、旅行のときいつも旅行カバンの中に入れてある。洗濯機など無いので全て手洗いだ。半袖シャツ、肌着、パンツは各5枚ずつ、靴下5足、おしぼりタオル3本。ロープを壁の隅のロッカーの角に縛り付け、暖房用のパイプをひと巻きして別の隅の窓枠の金具に結んだ。洗った物をハンガーで下げていくと、ロープが垂れて床に着きそうだ。もう一度ロープを天井近くに高く張り直した。

 部屋の中は結構暑い。3階なので回転窓を開けると、いい風が入り込んできた。寝るための全ての準備が終わったのは19時を過ぎていた。1時間ほどソファーに横になって休憩した後、ひとりで夕食のために町へ出掛けた。